OpenStreetMapで宇田川上流を見る。
今回は狼谷から代々木公園駅付近に向かって小田急線に沿って流れている宇田川本流とされる流れを中心に、南北の支流も合わせてみていこう。
（参考資料：国立国会図書館デジタルコレクション所蔵「東京市渋谷区地籍図下巻（旧千駄ヶ谷町、旧代々幡町）」内山模型製図社, 1935、渋谷区立中央図書館所蔵「火災保険特殊地図（戦前）渋谷区」沼尻長治/都市整図社, 1937）

まずは一番南、上原二丁目から流れてくる支流（大きくは2つの流れ）を見てみよう。
山手通りの下を通る地下道（春の小川をテーマとした壁画が描かれている）は代々木上原方向から流れてくる本流の古い流れの跡と思われるが、手前側は区画整理で流路が失われている。
支流の方は写真左手の階段横に見えるフェンスのあたりから出てきていたが、こちらも山手通り拡張でこの先は失われている。
ここからの写真は2025/9/3撮影。

いったん上原水道通りへ迂回して、山手通り西側の水路跡へ。西から山手通りに突き当たる道路が水路の上流部分。

振り返って上流側。すぐに井ノ頭通りに突き当たって水路跡は道路に飲み込まれてしまう。
写真右側には上原水道通りがあるが、そちらは後で見るとしてまずは井ノ頭通り南側に行ってみよう。

井ノ頭通り南側の水路敷を下流方向に見たところ。通りとは高低差があり階段がある。

水路敷を進んでいくと左右から2本の水路敷が合流する地点に出る。
右側は上原水道通りを流れる水路の上流部分から分かれてきたもので、左側はそれよりも上流部で南から流れてくる支流から分かれてきたものだ。

左の水路敷はすぐ先でいったん行き止まりになり、住宅地に遮られている。

右の水路敷はクネクネと進んでいく。

水路敷にはみ出した壁と、水路敷の中央に立つ電柱。

右に曲がって上原水道通りに出る。
昭和10年の地籍図ではもう少し上流側で分かれていたようだが、昭和12年の地図ではここで別れており、現在はここから下流部分だけが水路敷として残っている。

ここで一旦山手通りの方まで戻って上原水道通りを見てみよう。井ノ頭通りと山手通りの間は上原水道通り商店街となっている。

こちらも井ノ頭通りに斜めにぶつかって渡っていく。

井ノ頭通りを渡って西側へ。

さきほどの右側の水路敷との分岐点を過ぎたところにY字路がある。昭和10年の地籍図や昭和12年の地図では左が水路敷で右は水路敷ではないが、右も三田用水の北側まで喰い込む谷筋になっており、古い支流であったと思われる。

まずは左へ。まっすぐ進んだ道路が坂道になるところ、交差点から左に向かって先ほどの一番左側に分かれている水路敷が分岐しており、支流の水路敷は正面の住宅右側に入っていくところにある。

ちょっと戻って一番左側の水路敷が突き当たっていた住宅地の西側へ。西側は自動車も通れる崖下の道路として続いている。

カーブの先、写真奥の突き当たりが支流の交差点から分かれてきたところ。

突き当たり付近は左に向かう上り坂に合わせるために嵩上げされているようだ。写真右奥に支流の水路敷が見える。

支流の水路敷出口は右の階段のある方。昭和10年の地籍図では左の坂道はなく、水路敷のさらに右側に道路が描かれているのだが、そちらの道は現在残っていない（国土地理院Webサイトの昭和11年空中写真＝陸軍撮影にもなく、実在していたのかも確認できていない, 昭和12年地図では範囲外となっていて確認はできなかった）。

前の写真右奥には、崖上に上る階段がある（踊り場の上にもうひとつ階段がある）。昭和10年の地籍図ではこのあたりに池があって湧水があったように描かれており、支流としてはこのあたりが上流端だったようだ。

崖を上って振り返って見たところ。車止めの先が行き止まりのように見えるが、大木の左を通り抜けて階段を下りることができる。

そこから南を見たところ。地籍図に水路はないが微妙に谷間が続いており、谷頭は三田用水北側にあるようだ。用水路に直接つながっていたわけではない（どうろは手前で行き止まりになる）が、用水から漏れ出た水が流れていた可能性はあるかもしれない。

つづいてY字路から右の谷筋を追ってみる。
左右が上り坂になっている谷筋を進んでいくと、写真中央の交差点で右側に支谷が北へ伸びている。
ここからの写真は2025/9/24撮影。

支谷の中心は道路になっているが、左右との高低差はわずかであまり谷らしさはない（地形図で見ると谷になっているのがわかる）。

そのまま坂道を登っていくと谷頭は井ノ頭通りの南側にあった。

さきほどの谷筋の方は緩やかな坂道として西へ進み、道路に沿って南寄りに曲がっていく。写真奥あたりで左右と同じ高さになっているが、はっきりとした谷頭は見られない。

さて、ここからは宇田川本流の新富橋から本流を代々木上原駅方向へ見ていこう。
新富町から代々木八幡駅に向かっていく富ヶ谷一丁目通り。昭和10年の地籍図を見ると宇田川の水路は道路左側（南側）の歩道あたりを流れていたようで写真奥では駅前よりも南側を流れていた。
この写真は2025/9/3撮影。

が、全国Q地図の東京都3千分の1地図（1961-62年）を見ると、昭和30年代には駅前の方に水路が付け替えられているのがわかる。
水色の実線が1961〜62年の水路、水色の点線が1935年の水路になっていて、山手通りを挟んで左（西）の富ヶ谷小学校北側から右（東）の大野橋手前まで（オレンジ色の点線部分）が流路変更された部分になる。

付け替えられた水路は代々木八幡駅前の南側歩道を通っていた。
この写真は2024/6/11撮影。

小田急線に沿っている宇田川は富ヶ谷小学校北にある児童遊園のところで線路を北から渡ってきていた。
ここからの写真は2024/6/19撮影。

線路北側に回って横断歩道脇の水路敷を下流方向に見たところ。

振り返って上流側。宇田川はここまで小田急線北側を並走する道路のひとつ北側を流れているが、昭和10年の地籍図を見ると大きくは3つの流路があり、南北に並走する道路や線路の下を流れている部分もあったように見える。

すぐに左（西）に曲がって田中地蔵尊の脇を抜ける。

クネクネと曲がる水路敷。

次の交差点（代々木八幡3号踏切跡の北にある）西側には水路敷北側にあるモロッコ料理店が設置したベンチがあった。そこそこ陽当たりもよさそうなので外で食べる人もいるのだろう。

次の交差点（代々木八幡4号踏切跡の北にある）、昭和10年の地籍図を見るとここには北側（右）の道路から2本の水路が合流してきていたが、手前（東）寄りの水路は失われている。一方南側の道路との間にも水路敷があるのだが、どちら向きに流れていたのかはよくわからない。

ここでいったん北側道路の水路跡に寄り道してみよう。
東から流れてくる水路の跡は、遡っていくと緩やかに左カーブして山手通りに出る。代々木八幡宮付近で初台川から分かれてくる水路があったようだ。
ここからの写真は2025/9/8撮影。

前の写真よりも下流側、東から流れてくる水路が南へ下るあたりには庚申塔と地蔵尊があるが水路の方は残っていない。

西から流れてくる水路跡は道路南側（写真左）の歩道部分にあったと思われ、代々木八幡5号踏切跡北で北から流れくる支流を分けていたようだ。

進んでいくと、北（右）から流れてきていた水路跡との交差点に出る。
北側の流路はこの先にもあるが、いったんここで代々木八幡4号踏切の方へ戻って、あとでまた見にこよう。

南側道路の水路跡も確認してみよう。小田急線の高架化工事で水路が失われた部分も多いが、代々木八幡3号踏切跡から代々木八幡4号踏切跡付近では道路のある位置を流れていたようだ。
この写真は2025/12/22撮影。

戻って本流を上流へ。ここでも水路敷はカクカクと曲がりながら進んでいる。
ここからの写真は2024/6/19撮影。

南側の流れから水路が合流してくる。昭和12年の地図ではこちらの流れがメインになっていて、本流の上流側は水路が描かれていない。

実際には本流の水路敷はまっすぐ西から進んできており、北側（右）の道路との間には何ヶ所か路地がつながっている。写真奥には、北側から流れてくる支流との合流点がある。

本流側はまっすぐ進んで代々木八幡5号踏切跡から北に向かう道路に突き当たり、そこでいったん流路が失われている。上流は南側道路の方に出てくるようなので、あとで見に行ってみよう。

とりあえず先に北側の支流へ。代々木上原駅が近いためか、駐輪禁止の柵が並べられている。先ほどの北へ向かう道路の東側を並走していて通行量も少ないため、気をつけないと自転車だらけになってしまうのだろう。とはいえ、割り切って駐輪場として開放するには道幅（川幅）が狭いのが難点か。

すぐに西に曲がってさきほどの北へ向かう道路に出る。

道路に出たところで北を見る。さきほど東から見ていた蕎麦屋が左に見え、水路敷のある道路はまっすぐ北へ伸びている。途中微妙に蛇行していたようだが、現在の地籍図ではおおむね道路（西）側に水路敷が描かれている。
ここからの写真は2025/9/8撮影。

西側の崖上に東寺真言宗の雲照寺（うんしょうじ）が見え、水路跡が谷間であることがわかる。

東側の崖を上る坂道には階段がある。

先へ進むと、昭和10年や現在の地籍図で道路左側（西）から水路敷が合流してくる場所に出る。

合流してくる水路敷の道路を見たところ。地籍図では道路北側（右）が水路敷となっているが、道路との区別はつかない。

水路敷は次の角を曲がって北へ。

地籍図上は次の丁字路が上流端になっているが、その先の細道にも谷筋は続いているように見える。

東側の道路は1ブロック先の駐車場手前あたりが上流端となっているが、それらしい痕跡はない。
谷筋そのものはまだ北に続いているが、写真奥あたりが谷頭と思われる。

さて、戻って小田急線の脇を並走する道路（水路敷南側）に出て、代々木八幡5号踏切跡の入口から代々木上原駅方向を見たところ。南側の道路は商店街になっていて、本流は写真奥に見える銀行裏手で右側へ流れていたようだが見た目痕跡はない（地籍図では入口部分だけ道として描かれている部分が残っているが、先ほど見た本流の行き止まりまでの間は地籍図でも失われている。
その銀行脇に商店街と別れて奥へ進んでいく小道が見えるが、そちらが本流の上流となる。
ここからの写真は2024/6/19撮影。

車止めが林立している水路敷の様子。写真奥の車止めがある交差点は、昭和10年の地籍図に「昭水橋」と書かれている。

さらに進むと途中でクランク上に水路敷が曲がっている。

代々木八幡6号踏切から北へ向かう道路と交差するが、昭和10年の地籍図ではここに「二原橋」と書かれている。

その次の交差点。昭和10年の地籍図では、ここに南側から水路が合流している。

交差点から南の代々木上原駅方向を見たところ。地形としては駅の方がやや高くなっているように見える。
昭和10年の地籍図では写真中央付近で西から流れてくる水路があるが、現在は商店や住宅地になっていて失われている。
また写真奥で右からくる線路下の道路も水路跡で、代々木上原駅西側で井ノ頭通り南側から流れてくる支流の下流部分となっておりそこから線路の下を流れて代々木八幡2号踏切の先で本流に合流していたが、線路下の水路跡は失われている。